静まりし二つの羽根5

第19話
   影の白黒
イエムの居ない世界は、黄泉の黄色。
そうとは限らない。
それは俺たちが分かれてみて初めてわかること。
鳥が大空を羽ばたき、団をなした牛がそれから逃れるように突如、川を渡る。
そしてその亥が鳥を見つめる。
宗教の食の道は奥深いだろ、イエム。
各地の郷土の料理がそうなら、話は早いが、今は何かカウの力が
それをうやむやにしているんだよ。
イエムは先生にまたこつりと頭を叩かれて頭のコブをさすった。
本当にいい僧侶は獣肉は口にしないよ。
庭に植えたインゲンの葉が勢いよく一面を覆っていた。
世界のミストレルの消失というけれども
ぜラルドはダイムにその事を口にした。
ああ、あの橋か
十に工事は済んでいる。
あとは、その施行に道を備える花を添えるだけだ。
今時、扉に橋はどうも危うい。
いざと言うときに相手のなだれ込みを止められないし
流失も防げぬ。
とうとうと流れる示現流は時を包みこみ
古い柱の模型に勢いよく道と光をなぞらせながら
その一つ一つに都市を浮かばしている。
これが我々の新しい次元支点の交流装置だとは誰も気づきまいよ。
その頃、
レクは依頼のミストレルの修復の為に飛び込んだ光の渦の先
元の切の世界の、その支点モデルの都市の宿屋
ゼブユの宿から先の古民家のベットに寝ていた。
今までの世界がもしかしたら夢
それが夢だとしたら、、、、
ずい分時間ロスしてしまった。
どうやら俺が載せている方があいつの載せている分より多かったな。
その勘合札の端を持つと、レクは古民家をふらふらと出た。
しばらく風に吹かれながら歩くと、懐かしのゼブユの酒場に出た。
入口で三種のバーボンをやっていると
二人組の女性が何か話をしながら、ケラケラと笑いながらバーに入って来た。
そしてレクとは向かいの座席に付くと
突然、レクに話しかけた。
この時計、3日も遅れてたのほら、みて
そういうとレクに腕を翻し、そのタンクトップからほのかな匂いが香おる。
レクはあっけにとられながら時計に目が行った。
その瞬間、その子はこれゼンマイなの
きりきりとゼンマイを巻くと
そのバーに夜啼きの風が流れ込み。
時空が渦を巻き出した。
普段、次元流に慣れているレクでも
もう一人の女がなにか服を脱いで、手をレクの目の前に広げた。
ほらこの指、何本ある?
手を平行にゆらゆらゆらさせた。
さすがにレクは気を失った。
緩い相変わらず緩いマーラーの行進曲が鳴っている。
しばらくして
真っ暗で何もない空間の中にふわりふわりと自分の体が浮いている事に気づく。
いけない、もうそこでいいの。
誰かの声が響く。
レクは目を覚ました。
何かとこどろこで麻雀パイがはじけ飛ぶような音が途切れなく響いている。
あたりで福がなくなったとざわざわと騒いでいる。
レクは目覚めると再び古民家のベッドの上に居た。
なんだったんだあの二人ずれの女たちは。
ここは切の世界なんだろうか
あたりに白の光が点々とあたりを照らし
その先に細々と続いていた。
    ――つづくーー

第52話へ
index